お彼岸(ひがん)の時期になると、お墓参りに行き、ご先祖さまに花や線香を供えてお祈りをする風習があります。お彼岸は春分・秋分を中心に年に2回あり、それぞれ、「春のお彼岸」「秋のお彼岸」と呼びます。日本独自の行事として定着していますが、お彼岸はどのようにしてはじまったのでしょうか。そこで、お彼岸の意味や起源に加えて、供花の選び方やお墓参りのマナーなどの基礎知識を紹介します。
目次
お彼岸とは?春と秋の年に2回行われる日本独自の行事
お彼岸の期間は春分と秋分をはさんだ1週間
お彼岸は春と秋の年に2回あります。それぞれ、春分の日または秋分の日を中心に、前後3日間ずつを含めた1週間がお彼岸の期間です。
つまり、3月20日が春分の日の場合、3月17日~23日の1週間が「春のお彼岸」に該当します。
春分、秋分の日は年によって変動するため、お彼岸の期間もそれに伴って変わるのが注意点です。
また、お彼岸がはじまる日を「彼岸の入り」、期間の中心となる春分または秋分の日を「中日(なかび/ちゅうにち)」、最終日を「彼岸明け/はしりくち」などと呼びます。
お彼岸の意味や起源について
「彼岸」は、仏教語でご先祖さまがいるとされる「極楽浄土(ごくらくじょうど)」を意味します。
極楽浄土は、阿弥陀如来(あみだにょらい)さまがいる苦しみのない理想的な世界のことで、阿弥陀を信仰して念仏を唱えることで、死後に行けると考えられているのです。
また、西の彼方にあるとされることから、「西方浄土(さいほうじょうど)」などとも呼ばれます。
春分、および秋分の日は、太陽が真東から昇り、真西に沈むことから、極楽浄土に通じる道に近くなると考えられ、浄土信仰にもとづいた先祖供養の行事が定着したとされています。
日本には、古来、太陽信仰があり、五穀豊穣を太陽に願う「日願(ひがん)」と呼ばれる民間習俗もありました。
この日願が先祖供養の彼岸の期間と重なることから、両者が結びついて仏教行事となったのがお彼岸の起源との説もあります。
お彼岸の期間に行われる仏事は「彼岸会(ひがんえ)」と呼ばれ、西暦806年(延暦25年)に、はじめて行われたとされています。
お彼岸は花や線香をたむけて、ご先祖さまに感謝の祈りを捧げるのが一般的
ご先祖さまに感謝をし、祈りを捧げる期間であるお彼岸には、お墓参りをして、墓前で手を合わせる風習があります。
また、親戚宅などを訪問して、仏壇に花や線香をそなえるのも一般的です。
お墓参りは、お彼岸の期間中であれば、いつでも良いとされています。さらに、回数が多いほど良いとの考え方もあります。
親戚宅などを訪れる際は、あらかじめ相手の都合を聞いた上で、訪問日時を設定しましょう。
お彼岸の期間に訪問できない場合は、彼岸の入りまでに供花を送るのがおすすめです。
お彼岸とお盆の違いについて
お彼岸の風習は、先祖を供養するという点で「お盆」と共通していますが、それぞれ意味合いが異なります。
まず、期間に関しては、お彼岸が春分・秋分を中心とした7日間で、年に2回あるのに対し、お盆は8月15日(または7月15日)前後の数日間という違いがあります。
また、お盆には先祖の霊が一時的に家に帰ってくるとされ、迎え火や送り火をたくことがありますが、お彼岸には行いません。
これは、お彼岸が、あくまで極楽浄土にいる先祖を思い、供養する期間であるためです。
お彼岸には供花と供物を用意し、墓前や仏壇にそなえる
供花(きょうか/くげ)はお彼岸の必需品
お彼岸には、墓前や仏壇に「供花」をそなえるのが一般的です。仏花や墓花と呼ばれることもあります。
お墓には、通常、左右2カ所に花器があるので、生花2束を1対として持参します。
なお、親戚宅を訪問して、仏壇などにそなえる場合は、そのまま飾れる仏事向けの花束やアレンジメントなどがおすすめです。
春のお彼岸には「ぼたもち」、秋のお彼岸には「おはぎ」をそなえるのが定番
お彼岸といえば、「ぼたもち」や「おはぎ」をそなえるのも定番の風習です。
両者は名前が異なるものの、実は同じ和菓子を表します。
一説によると、春は牡丹(ぼたん)の花が咲くころに食べるので「ぼたもち(牡丹餅)」、秋は萩の花が咲くころに食べるため「おはぎ(御萩)」と呼ばれるようになったといわれています。
ぼたもちもおはぎも、もちをあんこで包んだ生菓子という点では同じです。
ただし、厳密には、ぼたもちには「こしあん」、おはぎには「つぶあん」を使用します。秋は収穫したばかりで皮のやわらかい小豆を使用できますが、春は保存後の皮のかたい小豆を使うため、こしあんにした方がおいしく食べられるためです。
さらに、春のぼたもちは牡丹の花のように大きく丸くつくり、秋のおはぎは萩の花のように小さな俵の形に成型することもあります。
ぼたもちやおはぎをお彼岸におそなえするのは、小豆に魔除けの効果があると信じられていたためです。
加えて、昔は高級品であった貴重な砂糖を使ってあんこをつくり、そなえることで、先祖を敬い、感謝する気持ちを伝えたとされています。
また、あんこともちを合わせてつくることから、ご先祖さまと「心を合わせる」という言葉にかけているとも言われています。
春のお彼岸に適した供花は?故人の好きだった花がおすすめ
墓前にそなえる仏花というと、菊(きく)を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?
菊は春と秋のどちらも流通しており、仏花の定番といえる品種ですが、特にこだわる必要はありません。
お彼岸にそなえる供花の種類に特に決まりはないため、故人が好きだった花や、季節の花などをそなえるのがおすすめです。
ただし、トゲがある花、ツルがある花、有毒の花などをそなえるのはタブーとされているので注意しましょう。
春のお彼岸の供花におすすめなのは、故人が好きだった花に加えて、春に見頃を迎える季節の花です。
邪気を払うとされ、高貴な花の代表でもある菊のほか、カーネーション、マーガレット、百合(ユリ)、トルコキキョウ、スターチス、ストックなどがおすすめです。
供花の花色は、ホワイトや淡いカラーが適しています。ホワイトをベースに、淡いピンク、パープル、ブルー、イエローといったカラーの花を合わせましょう。
なお、お墓の場所によっては、供花を持ち帰らなければならない場合もあります。
お彼岸にお墓参りをするときのマナー
お彼岸にお墓参りのする際の服装は、普段着などで構いません。
墓石やお墓まわりの掃除をするので、むしろ動きやすい服装の方がおすすめです。
ただし、彼岸会などの仏事に参加する場合、派手な色やカジュアルすぎる格好は避け、黒や灰色などのモノトーン調の服装を着用しましょう。
帽子の着用については、墓前で手を合わせたり、仏事に参加したりするときは脱ぐのがマナーです。
お墓参りの際は、掃除の前に、いったん手を洗って清めてから作業に取りかかります。墓前に供花や供物をそなえるのは、墓石やお墓まわりの掃除がひととおり終わってからにしましょう。
供花や線香のほかに、故人が好きだった飲食物を供物としてそなえることがありますが、お墓参りが終わったら、持ち帰るのが基本です。または、その場で食べたり飲んだりするのも良いとされます。
線香、供花、供物の後処理については、墓地や霊園などによってルールが異なるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
まとめ
お彼岸は春と秋の2回行われる、ご先祖さまに感謝の祈りを捧げる日本ならではの風習です。お盆のように、ご先祖さまの霊を自宅に迎え入れるわけではありませんが、西方浄土にいるご先祖さまを思い、供花や供物をおそなえして、墓前や仏壇に手を合わせると喜ばれるでしょう。春のお彼岸にそなえる供花は、季節を感じる春らしい花がおすすめです。花と植物のギフト通販サイト「HanaPrime(ハナプライム)」では、供花に適した花束やアレンジメントをそろえています。花瓶いらずで、そのまま飾れるタイプの花束もおすすめです。