ドリナリア クエルシフォリアの育て方
公開日 2025年10月16日
更新日 2025年10月16日
監修者情報
覚張大季
植物と人との関わりに魅了され、日本各地の植物農園を見て回る。HanaPrimeの植物部門の立ち上げ後はオフィスや商業施設、個人宅など、幅広いシーンのグリーンコーディネートを数多く担当。植物の生態や特性を深く掘り下げ、それぞれの空間やライフスタイルに適したグリーン空間デザインを提案することが得意。観葉植物の世界に情熱を注ぎ、植物の価値を最大化することを使命としている。
INDEX
目次
ドリナリア クエルシフォリアの基本情報
| 植物名 | ドリナリア クエルシフォリア |
| 学名 | Drynaria quercifolia |
| 英名 | Oak Leaf Fern / Basket Fern |
| 原産地 | 東南アジア〜南アジアの熱帯地域 (インド、インドネシア、フィリピンなど) |
| 科目 | ウラボシ科 |
| 属名 | ドリナリア属 |
ドリナリア クエルシフォリアは、シダ植物の中でも観賞価値が高く、初心者にも扱いやすい定番種です。
ドングリの葉に似た形状から「オークリーフファーン」とも呼ばれ、シカの角のように広がる胞子葉と、茶褐色の貯水葉とのコントラストが美しい表情を見せます。
着生力に優れており、板付けや流木への活着もスムーズなため、インテリアグリーンとしても人気です。
丈夫で日陰にも強く、育てる過程で葉の変化も楽しめるため、最初の一株としても安心でしょう。
月別栽培カレンダー
板付け
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株分け
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種類と品種
| 品種名 | 葉の形 | 大きさ | 成長速度 | 育てやすさ | レア度 |
|---|---|---|---|---|---|
| ドリナリア クエルシフォリア | 深く切れ込む大型葉 | 大型 | 普通 | ★★★ | ★ |
| ドリナリア ボニイ | 小型で細かい切れ込み | 小型 | 早い | ★★ | ★★★ |
| ドリナリア コロナンス | 幅広でなめらか | 中〜大型 | 普通 | ★★★ | ★★ |
| ドリナリア スパルマニー | 厚みのある波形 | 中型 | 遅い | ★★ | ★★ |
| ドリナリア リギデュラ | 短く放射状 | 小型 | 普通 | ★★★ | ★★★ |
ドリナリア ボニイ
葉が小ぶりで、繊細な切れ込みが入った優美な姿が魅力の品種。
流通数が限られているため、入手は主に専門店や輸入株に限られます。
コンパクトで飾りやすい反面、湿度や温度の管理に慣れが必要なため、育成経験のある方におすすめです。
ドリナリア コロナンス

幅広でなめらかな葉がゆったりと広がる、落ち着いた雰囲気を持つ品種。
耐寒性があり、最低10℃ほどまで耐えるため、冬場の管理も比較的容易です。
生育はゆるやかですが、室内でも育てやすく、ボリュームのある姿を楽しめます。
ドリナリア スパルマニー
厚みのある波打つ葉が大きく広がる、野趣あふれる原種系です。
ナチュラルな印象が強く、自然風のインテリアにもよく合います。
やや乾燥に弱いため、霧吹きなどで湿度を保つ必要があり、中〜上級者に向いている品種です。
ドリナリア リギデュラ
短く丸みを帯びた葉が放射状に展開する、扱いやすい小型品種。
飾る場所を選ばず、省スペースでも育てられるため人気があります。
貯水葉と胞子葉の形が明確に分かれていて、見た目にメリハリがある点も魅力です。
ドリナリア クエルシフォリアの葉っぱの特徴

ドリナリア クエルシフォリアは、2種類の葉を持つシダ植物として知られています。
ひとつは、株元を覆うように広がる茶褐色の「貯水葉」で、水分や栄養を蓄える役割を担う葉です。
もうひとつは、深く切れ込みの入った羽のような形の「胞子葉」で、成長にともなってダイナミックに広がっていきます。
この2つの葉の形と色のコントラストが、美しい観葉植物としての魅力を際立たせているといえるでしょう。
ドリナリア クエルシフォリアは花が咲く?
ドリナリア クエルシフォリアは、花を咲かせることのないシダ植物です。
一般的な草花と異なり、胞子によって繁殖するのが特徴で、花や種子は形成しません。
花を楽しむというよりは、独特な葉姿や成長過程の変化を観賞する植物といえるでしょう。
ドリナリア クエルシフォリアの花言葉
ドリナリア クエルシフォリアの花言葉は、「知恵」「賢明」「保護」です。
ドリナリア クエルシフォリアの育て方
ドリナリア クエルシフォリアは、比較的丈夫で育てやすいシダ植物です。
直射日光を避けた明るい日陰や半日陰の環境を好み、風通しの良い場所に置くと健康に育ちます。
空気中の湿度を好むため、乾燥する時期はこまめな霧吹きで湿度を補うとよいでしょう。
水やりの頻度
春〜秋(成長期)
- 土が乾いたタイミングでたっぷりと水を与える
- 過湿にならないよう鉢底から水がしっかり抜ける状態を保つ
- 板付けや流木付けの場合は毎日霧吹きで全体を湿らせると乾燥を防ぎやすい
- 葉にもこまめに葉水を与えることで葉のツヤやハリを維持しやすい
冬(休眠期)
- 気温の低下とともに生育が緩やかになるため水やりは控えめが基本
- 用土が完全に乾いてから少量だけ与えるのが望ましい
- 着生株の場合は2〜3日に1回ほど軽く霧吹きする程度で十分
季節ごとの生育リズムに合わせて調整することで株が元気に育ちやすくなります。
肥料のあげ方
春〜秋(成長期)
- 2か月に1回ほどのペースで緩効性の置き肥を与える
- 液体肥料を使用する場合は薄めて2週間に1回程度が目安
- 窒素が多すぎる肥料は葉ばかりが育ちやすくなるためバランス型を選ぶとよい
冬(休眠期)
- 気温が下がり成長が止まるため施肥は不要
- 無理に与えると根に負担がかかるため控えるのが基本となる
肥料は控えめを心がけ株の状態に合わせて無理なく施すのが長く楽しむコツです。
病害虫・害虫対策
ドリナリアは病害虫に比較的強いシダ植物ですが、風通しの悪い環境や水苔の保水性が高すぎると、特有の害虫が発生しやすくなります。
特に湿度がこもりやすい板付けや流木付けでは注意が必要です。
以下に、ドリナリア クエルシフォリアで発生しやすい害虫と、その対処法を紹介します。
カイガラムシ
- 貯水葉や根茎(リゾーム)に白や茶色の硬い殻が付着する
- ベタつきや黒いカビ(すす病)を伴う場合もある
- 株全体が弱り、葉が小さくなる傾向が見られる
ドリナリアのリゾーム部分は複雑な形状をしているため通気が悪くなりがちです。
発見したら綿棒や歯ブラシでこすり落とし、数が多い場合は殺虫スプレーや薬剤をピンポイントで使用します。
また、板付け株は水苔の通気性を維持するために、表面を時々ほぐして湿気がこもらないようにしましょう。
ハダニ
- 胞子葉の裏側に赤や白の小さな点が現れる
- 葉が銀白色にくすみ、斑点状の模様が出る
- 進行すると葉がしおれて落葉することもある
ドリナリアは乾燥に弱いため、こまめな葉水が有効です。
葉の裏にも霧吹きを行うことで、ハダニの発生を防ぎやすくなります。
発生時には朝〜昼の時間帯に葉裏をシャワーや霧吹きで洗い流すようにしてください。
日中であれば乾きやすく、湿度による病気のリスクも低減できます。
反対に夕方以降に濡らすと、夜間の湿気がこもりやすく病気や害虫の原因になるため避けましょう。
アブラムシ
- 展開途中の柔らかい貯水葉に集団で発生しやすい
- 葉の縁が波打つ、ねじれるなどの症状が出る
- ウイルス性の病気を媒介するリスクもある
アブラムシは早期発見が重要で、少数であれば歯ブラシやピンセットで取り除くだけで十分です。
大量発生している場合は、植物に優しい殺虫剤(オルトラン水和剤など)を薄めて散布するとよいでしょう。
新芽は傷みやすいため、やさしく丁寧に対処してください。
「風通しを確保し、湿りすぎず乾きすぎない環境を保つこと」がドリナリアの健康を守る最大の予防策です。
特にリゾーム付近の蒸れ対策を意識し、日々の観察で小さな変化を見逃さないようにしましょう。
板付け・流木付けのやり方
ドリナリア クエルシフォリアは、リゾーム(根茎)の部分からしっかりと着生する性質を持っていて、板付けや流木付けとの相性が非常に良い観葉植物です。
ナチュラルな見た目を引き立ててくれるうえ、飾る場所を選びやすく、壁面や棚などに吊るすディスプレイも人気があります。
作業自体はシンプルですが、活着の精度を高めるためには、初期段階での丁寧な固定が重要です。
- 必要な道具をそろえる
- 水苔を仮止めする
- ドリナリアを配置する
- しっかり固定する
- 水苔を整える
- 明るい日陰で養生する
① 必要な道具をそろえる
- 小型のドリナリア株(株分けしたものや若株が理想)
- 杉板やコルクバーク、流木などの着生材
- 水で戻した水苔(30分以上浸けてふやかす)
- テグス、麻ひも、園芸用ワイヤーなどの固定具
- ハサミ、ピンセット、剪定バサミなど
② 水苔を仮止めする
着生板の上に軽く絞った水苔をふんわり広げ、中心部のみ軽く仮止めします。
この段階では仮留めだけにし、ドリナリアの配置後に位置を調整しながら本固定を行うと、より美しく仕上がるでしょう。
③ ドリナリアを配置する
リゾームが板に密着するように株をのせ、見せたい向きを確認しながら角度や向きを調整します。
④ 仮止めから本固定へ
テグスやワイヤーで数か所を巻きつけ、株が動かないように本固定を行います。
この工程が「仮止め」状態から本格的な固定に移る重要なステップです。
きつく締めすぎないよう注意しながら、株全体が安定するよう均等に巻き付けましょう。
⑤ 水苔を整える
飛び出した部分をハサミでカットし、外観を整えて清潔に保ちましょう。
乾燥しすぎないよう、水苔の厚みは均一にしておくと管理しやすくなります。
⑥ 明るい日陰で養生する
固定直後は根が安定していないため、通気のある半日陰で管理してください。
活着するまでの1〜2か月はこまめに霧吹きを行い、乾燥を防ぎます。
ドリナリア クエルシフォリアの栽培環境
高温多湿な森林に自生するドリナリア クエルシフォリアは、室内でも自然に近い環境を整えると美しい葉姿を長く楽しめます。
育てるうえでは、光や風、湿度の管理が不可欠で、環境の影響を受けやすい植物です。
ここでは、置き場所、温度、通気性など、栽培に適した環境づくりのポイントを解説します。
置き場所と日当たり

ドリナリア クエルシフォリアは直射日光を避けた明るい日陰を好みます。
強い日差しに長時間さらされると葉焼けを起こしやすいため、レースカーテン越しの柔らかな光を当てるか、やや日陰寄りの窓辺に置くとよいでしょう。
室内の中でも光が一方向から当たる場合は定期的に鉢や板の向きを変えると、葉の成長が偏らずバランスよく育ちます。
風通しが悪く空気が滞る場所ではリゾームが蒸れて傷んでしまうため、とくに湿度の高い季節には、サーキュレーターや換気で通気性を確保すると安心です。
適切な温度|どれくらいの寒さまで耐えられる?
ドリナリア クエルシフォリアは高温多湿の環境を好むシダ植物で、春から秋にかけての温暖な時期によく成長します。
理想的な生育温度は18〜28℃前後で、寒さにはやや弱いため、最低でも10℃を下回らないよう管理することが大切です。
特に冬場は注意が必要で、窓際や玄関など冷え込みやすい場所に長時間置くと、葉がしおれたり枯れたりする原因になります。
夜間の気温が下がる季節には、室内の暖かい場所に移動させるか、必要に応じて暖房や保温対策を施しましょう。
用土・着生材

シダ植物の中でも、ドリナリア クエルシフォリアは地面に根を下ろさず、樹木や岩に着生して育つタイプとして知られています。
そのため、リゾーム(根茎)が空気に触れやすい状態を保つよう心がけ、鉢栽培でも通気性のある用土を使うようにしましょう。
おすすめの用土配合は、以下の比率を参考にするとよいでしょう。
- 水苔:4
主に保水と根の保護を担う - ベラボン(ヤシの実繊維チップ):3
通気性と軽量性を確保 - 軽石(小粒):2
排水性と根の通気性向上に役立つ - 観葉植物用の土:1
栄養補給のベースとして少量加える
この配合は、着生植物に適した「湿りすぎず、乾きすぎない」環境をつくるのに適していて、鉢植えでもリゾームが健やかに育ちます。
とくに水苔は保水力が高いため、乾燥しやすい室内では多めに配合しておくと管理がしやすいです。
ドリナリア クエルシフォリアを胞子から育てると大変?
ドリナリア クエルシフォリアは胞子で増やせるシダ植物ですが、無菌に近い高湿度環境の維持が必要で、発芽や育成には非常に手間と時間がかかります。
芽は小さく成長も遅いため、観賞できる大きさになるまで2〜3年かかることも。
初心者には、市販の若い株や株分け苗からの育成が現実的でおすすめです。
ドリナリア クエルシフォリアの増やし方

ドリナリア クエルシフォリアは株分けによって増やすのが一般的で、胞子培養のような方法と比べて、家庭でも取り組みやすいのが特徴です。
しっかり育った親株があれば、リゾーム(根茎)を分けて新しい株として育てられるため、株の更新や整理にもなります。
増やすタイミングや管理方法を押さえておくことで、栽培の成功率を高めながら、増やす楽しみも得られるでしょう。
株分けの時期はいつがいい?
適した時期は4〜6月です。
この時期は成長が活発になるタイミングでもあり、新しく分けた株もスムーズに根づきやすくなります。
逆に、真夏や冬など極端な気温環境下では株が弱りやすいため、避けるようにしましょう。
株分けのやり方
- 親株を鉢から抜く
- 水苔や用土を落とす
- 分けやすいリゾームを見つける
- 清潔な刃物でカット
- 切り口に殺菌処理
- 新しい水苔や着生材へ植え付け
- 明るい日陰で養生
① 親株を鉢から抜く
植え込み材(鉢や着生材)から株全体をそっと外します。
リゾームが折れやすいため、無理に引っ張らず、鉢の縁を軽く叩いて緩めてから取り出すのがポイントです。
② 水苔や用土を落とす
根やリゾームに絡んだ水苔を、指先でやさしくほぐすようにして取り除きます。
リゾームの形がしっかり見えるようにして、分ける位置を見極めましょう。
③ 分けやすいリゾームを見つける
理想は2〜3個以上の芽がついている部分。
芽がない場所で分けると、成長せず枯れてしまうこともあるため、芽の位置を必ず確認しましょう。
④ 清潔な刃物でカット
ナイフやハサミは、使用前にアルコールや熱湯で消毒しておくこと。
リゾームをスパッと切れるよう、切れ味の良い道具を使いましょう。
⑤ 切り口に殺菌処理
切断面は腐りやすいため、木炭の粉やベンレートなどの殺菌剤をまぶしておきましょう。
乾かす時間(数時間〜半日)を設けるとより安心です。
⑥ 新しい水苔や着生材へ植え付け
ふやかした清潔な水苔を使い、切り分けた株を包むように固定します。
板や流木の場合も、リゾームが密着するようにしっかり巻きつけてください。
⑦明るい日陰で養生
風通しが良く直射日光の当たらない場所で1〜2か月ほど養生します。
この期間は乾燥させないよう、毎日霧吹きで湿らせてあげることで、ぐんぐん育ってくれるはずです。
植え替え時期はいつがいい?
ドリナリア クエルシフォリアの植え替えに適した時期は、4〜6月頃です。
この時期は気温が安定していて、植物の生育が活発になるため、植え替えによるストレスを受けにくく、新しい環境にも順応しやすくなります。
ただし、以下のタイミングは避けた方がよいでしょう。
- 真夏(7~8月):高温多湿で蒸れやすく、根腐れや病害虫のリスクが高まる
- 冬(11~2月):生育が鈍る時期で、植え替えによるダメージから回復しにくい
目安として2年に1回程度、リゾームが鉢からはみ出したり、水苔が劣化してきたタイミングで植え替えます。
鉢替えのやり方
ドリナリア クエルシフォリアの鉢替えのやり方を、初心者にも分かりやすく手順付きで紹介します。
- 必要な道具を準備する
- 古い鉢から株を取り出す
- 状態をチェックして不要な部分を剪定
- 新しい鉢に用土を入れ、株を配置する
- 鉢替え後の管理
① 必要な道具を準備する
② 古い鉢から株を取り出す
鉢を逆さにして、株を優しく取り出します。根鉢が固くなっている場合は、鉢の外側を軽く叩くとスムーズです。
根やリゾームについた古い水苔や用土をやさしく取り除きます。
③ 状態をチェックして不要な部分を剪定
黒ずんだ根、傷んだ葉や貯水葉、カビのある部分があればカット。
リゾームが伸びすぎている場合は、芽を2~3個残して株分けも検討しましょう。
④ 新しい鉢に用土を入れ、株を配置する
鉢底に軽石などを敷き、水はけを良くしましょう。
中心に株を置き、リゾームが少し顔を出すような位置にセットします。
周囲に配合用土をふんわりと詰めていき、押さえすぎずに軽く固定。
⑤ 鉢替え後の管理
植え替え後は明るい日陰に置き、風通しの良い環境で管理します。
根が落ち着くまでの1〜2週間は水を控えめにし、根の活着を確認してから毎日霧吹きで葉水を与えましょう。

