ニューサイランの育て方
公開日 2025年08月12日
更新日 2025年08月12日
育てやすさ
初心者の方でも育てやすいのでおすすめです。
監修者情報

覚張大季
植物と人との関わりに魅了され、日本各地の植物農園を見て回る。HanaPrimeの植物部門の立ち上げ後はオフィスや商業施設、個人宅など、幅広いシーンのグリーンコーディネートを数多く担当。植物の生態や特性を深く掘り下げ、それぞれの空間やライフスタイルに適したグリーン空間デザインを提案することが得意。観葉植物の世界に情熱を注ぎ、植物の価値を最大化することを使命としている。

INDEX
目次
ニューサイランの基本情報
植物名 | ニューサイラン |
学名 | Phormium |
和名 | 入才蘭 |
英名 | New zealand flax |
別名 | マオラン、フォーミウム |
原産地 | ニュージーランド |
科名 | リュウゼツラン科 |
属名 | ニューサイラン属(マオラン属) |
開花時期 | 6〜8月 |
ニューサイランは、ニュージーランドを原産地とする観葉植物です。
すらりとした細長い葉を株元から扇状につけ、品種によって緑色や赤色、銅色や紫色などさまざまな色が楽しめます。
原産地のニュージーランドでは、葉から繊維を採って編んだり、花から蜜を採ったりと多方面で活用されている作物です。
日本では観賞用の園芸植物として育てられるだけでなく、フラワーアレンジメントや生け花の材料としても使われています。
月別栽培カレンダー
植え付け・植え替え
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肥料(庭植え)
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開花
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種類と品種

品種 | 葉の色 | 草丈の目安 | 斑の有無 | 耐寒性 | 育てやすさ | レア度 |
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フォルミウム テナックス | 深緑色で光沢がある | 1.5〜3m | なし | 非常に高い | ◎ | 低い |
フォルミウム クッキアヌム | 明るめの緑色 | 60cm〜2m | なし | 高い | ◯ | 高い |
プルプレア(パープレア) | 赤紫〜ダークブロンズ | 1〜2m | なし | 高い | ◯ | 低い |
バリエガータ | 緑の葉にクリーム色の斑 | 1〜1.5m | あり | 低い | ◯ | 普通 |
アプリコットクイーン | 緑とオレンジのストライプ | 1〜1.2m | あり | 低い | ◯ | 高い |
イブニンググロー | ピンクとブロンズのストライプ | 1〜1.2m | あり | 低い | ◎ | 普通 |
フォルミウム テナックス

テナックスはニューサイランの原種にあたる品種で、斑のないシンプルな深緑色の葉が真っ直ぐに立ち上がる力強い姿が特徴です。
成長すると高さは約3メートル、横幅は2メートルほどにまで達することがあり、ニューサイランのなかでは大型に分類されます。
耐寒性に非常に優れており、氷点下10度の寒さにも耐えることが可能です。
フォルミウム クッキアヌム
クッキアヌムは、ニューサイランのもう一つの原種として知られています。
葉は青みがかった緑色で、草丈はおおよそ60cm〜1m程度で、大きく育っても2m未満とコンパクトです。
テナックスと比べて葉は細く柔らかめで、全体的にやや繊細な印象を持ちます。
葉のカラーバリエーションが豊富な園芸品種の多くは、このクッキアヌムを元に改良されたものです。
小型で扱いやすく、庭植えや鉢植えでも楽しめるため、観賞用としても高い人気があります。
プルプレア(パープレア)
プルプレアは、バリエガータと並んで人気の高いニューサイランの園芸品種です。
葉は紫がかった濃い色合いで、銅葉タイプの代表格とされています。
深い色合いとつややかな光沢が特徴で、落ち着きのあるシックな印象を与える品種です。
植物の色味が単調になりがちな花壇やコンテナの引き締め役として映え、周りの緑をより美しく見せてくれます。
バリエガータ
バリエガータは、緑色の葉にクリーム色の斑が入った品種です。
緑とのコントラストが美しく、柔らかな印象を与えるため、庭や鉢植えのアクセントとして人気があります。
草丈は1〜1.5m程度で、比較的コンパクトな品種です。
強い直射日光で葉焼けする可能性があるため、半日陰での管理をおすすめします。
耐寒性は他の品種と比較するとやや劣りますが、温暖な地域では屋外での栽培も可能です。
アプリコットクイーン
アプリコットクイーンは、緑色の葉にアプリコット色やクリーム色のストライプが入る品種です。
華やかな印象を与えて、寄せ植えや庭の差し色として人気があります。
草丈は約1〜1.2mで、寒さにはやや弱く、霜の降りる地域では冬場の防寒対策が必要です。
耐暑性は他の品種と同様に高く、日差しの強い場所でも元気に育ちます。
イブニンググロー
イブニンググローは、ピンクや赤みを帯びたブロンズ系の葉色が魅力的な品種です。
葉には淡いピンクやクリーム色のストライプが入り、やわらかな光沢とあたたかみのある印象を与えます。
耐暑性は高く、夏の強い日差しにもよく耐えますが、耐寒性はやや弱く、冬場は霜よけなどの対策が必要です。
草丈はおおよそ1〜1.2mで、中型サイズの植栽に適しています。
ニューサイランの葉っぱの特徴

ニューサイランの葉は細長く、シャープでスタイリッシュな印象を与えます。
新しい葉は株の中央から扇形に広がるようにして成長し、次第に外側へと展開していくのが特徴です。
葉色はつやのある深い緑色以外にも、銅色や紫色、赤色など種類が豊富で、黄色の斑入りや葉の縁に白や黄色の線が入ったものもあります。
ニューサイランはどんな花が咲く?

ニューサイランは、鮮やかな赤やオレンジの花を咲かせます。
花茎の先端にそり返った筒状の花が複数集まり、エキゾチックな雰囲気です。
ただし、花をつけるのは十分に成熟した株のみで、開花するのは数十年に1度程度といわれています。
鉢植えや室内管理では開花しにくいため、花を咲かせてみたい場合は屋外で地植えにするとよいでしょう。
ニューサイランの花言葉
ニューサイランの花言葉は「素直」です。
葉がまっすぐ上向きに伸びる様子に由来しています。
ニューサイランの育て方

耐寒性にも耐暑性にも優れているニューサイランは、初心者でも育てやすい観葉植物です。
水やりや肥料の与え方、剪定方法などに留意すると、より美しい成長が期待できます。
水やりの頻度
ニューサイランの水やりは、季節に応じて頻度や与える量の調整が必要です。
また、鉢植えと地植えでも水やりの仕方は異なります。
鉢植えの場合
季節 | 頻度 | 水の量 |
---|---|---|
春〜夏 | 土が乾いたら | たっぷり |
秋〜冬 | 土が完全に乾いて数日後 | たっぷり |
鉢植えは地植えに比べて土が乾燥しやすいため、こまめに観察して水やりが必要です。
季節を問わず、鉢底から水が出るまでたっぷりと与えてください。
地植えの場合
季節 | 頻度 | 水の量 |
---|---|---|
春〜夏 | 日照りが続いたら | たっぷり |
秋〜冬 | 不要 | 不要 |
地植えの場合は基本的に水やりは不要です。
ただし、成長期である春〜夏に雨が降らない日が続いた際には、たっぷりと水を与えましょう。
肥料のあげ方
ニューサイランを元気に育てるためには、肥料の使用がおすすめです。
鉢植えでも地植えでも、植え付けや植え替えの際には、元肥として用土に緩効性化成肥料を混ぜましょう。
鉢植えは、生育期の春〜夏にかけて追肥として1ヶ月に1回程度、固形の緩効性肥料を与えてください。
病害虫・害虫対策
ニューサイランには、特に問題になる病害虫の被害はありません。
ただし、水の与えすぎによる根腐れには気をつけましょう。
特に、鉢植えは根腐れしやすいので、排水性の高い用土に植え付け、季節ごとに適切な頻度で水やりの頻度をしてください。
植え方|地植えのやり方
ニューサイランの地植えは、生育期の春か秋におこなってください。
特に、夏に向けて元気に育っていく3月中旬〜4月上旬がおすすめです。
水はけと日当たりが良い場所を選びましょう。
霜が降りる地域では、建物の南側などを選び、北風ができるだけ当たらないような工夫が必要です。
ニューサイランの地植えの手順は、以下の通りです。
- ニューサイランに適した土壌を作る
- 株を取り出し植えつける
- 水を与える
① ニューサイランに適した土壌を作る
植え付け前に庭土に腐葉土を3〜4割程度混ぜておくと、作業後の成長が良くなります。
粘土質の土壌など水はけがよくない庭土の場合は、赤玉土や軽石を2〜3割程度混ぜると保水性と排水性のバランスが整います。
② 株を取り出して植えつける
スコップなどで軽く穴を掘り、植え付ける場所を決めます。
株の根元を持ち、ポットや鉢からニューサイランを取り出したら、穴に入れて周りの土を軽くかぶせましょう。
ニューサイランは根を激しく傷つけてしまうと枯れやすい品種のため、根鉢は崩さずにそのまま植えつけてください。
③ 水を与える
最後に水をたっぷりと与えます。
葉の間に水が溜まらないように、用土に直接与えるようにしましょう。
剪定|大きくなりすぎたらどうする?

ニューサイランは自然に形が整う品種のため、本格的な選定は不要です。
大きくなりすぎた葉は、根元部分を清潔なハサミで切り取ってください。
背が低い新葉と交代させるイメージで間引くとよいでしょう。
また、株が蒸れてしまうと一気に枯れるため、枯れた葉や傷んだ葉がある場合は、根元から切り落としてください。
混み合っている部分も蒸れの原因となるため、株元から葉を刈り取りましょう。
ニューサイランの葉っぱが枯れる原因は?
ニューサイランの葉が枯れる原因は、主に以下の3つが考えられます。
- 根腐れを起こしている
- 根が傷ついている
- 根詰まりを起こしている
根腐れを起こしている
ニューサイランは定期的な水やりが必要ですが、たくさん与えれば与えるほど良いわけではありません。
水やりしすぎると土の中の湿度が高くなり、根腐れが起きてしまいます。
根腐れが起きている植物は、根が破損しているため酸素や栄養分を吸収できない状態です。
根腐れを起こさないためにも、水やりは土が乾いてからおこないましょう。
根が傷ついている
植え付けや植え替えの際に根を傷つけてしまうと、ニューサイランが枯れる可能性があります。
どの植物でも、根は水分や栄養分を吸収するために重要な部分ですが、ニューサイランは特に根を激しく傷つけてしまうと、枯れやすい品種です。
植え付けや植え替えの際には、根鉢は崩さずそのまま植えるようにしましょう。
根詰まりを起こしている
根詰まりを起こしていると、根から十分に水分や栄養分が吸収できないため、枯れる原因になります。
ニューサイランの根は太く、観葉植物のなかでも根詰まりしやすい品種です。
鉢底から根が出ていたり、表面の土がカチカチに固くなったりしているときは、根詰まりを起こしているかもしれません。
根詰まりを起こさないためにも、1〜2年に1回の頻度で植え替えをしましょう。
ニューサイランの栽培環境

ニューサイランは日本の気候に適した観葉植物ですが、置き場所や栽培適温を意識してさらに整えれば、より美しく長く楽しめます。
置き場所と日当たり

ニューサイランは日光を好む植物のため、できるだけ日光が当たる風通しの良い場所での栽培がおすすめです。
日当たりが不十分な状態が続くと、葉色が悪くなったり、ひょろひょろしたりするため、様子を見ながら置き場所を調整しましょう。
葉に斑がある品種や色鮮やかな品種は、真夏の強い日光には弱い傾向にあります。
半日陰や明るい日陰でも十分に育つため、以下のように置き場所の工夫をしましょう。
- 午前中だけ日が当たる場所に置く
- 遮光率30〜50%の遮光ネットやすだれで陰を作る
- 樹木の下やパーゴラの陰に置く
- 夏のみ鉢植え管理にする
- レースカーテン越しの明るい室内に置く
適切な温度|どれくらいの寒さまで耐えられる?
ニューサイランの栽培適温は、15〜25℃です。
真夏の暑さや、真冬の寒さには弱い傾向にありますが、関東以南では屋外の地植えでも栽培できます。
品種によって耐暑性や耐寒性は異なるため、栽培する前に確認するとよいでしょう。
代表的な品種の耐暑性と耐寒性は以下の通りです。
品種名 | 耐暑性(上限温度) | 耐寒性(下限温度) |
---|---|---|
フォルミウム テナックス | 約40℃ | 約-10℃ |
フォルミウム クッキアヌム | 約35〜38℃ | 約-5℃ |
プルプレア(パープレア) | 約35℃ | 約-5℃ |
バリエガータ | 約33℃ | 約-3℃ |
アプリコットクイーン | 約33〜35℃ | 約-2℃ |
イブニンググロー | 約38〜40℃ | 約-3℃ |
耐寒性が約-5℃までの品種は、冬場の霜対策として鉢植えでの栽培がおすすめです。
栽培する地域の気温に合わせて品種を選んだり、栽培方法を検討したりしましょう。
用土
ニューサイランは適度な乾燥を好みます。
そのため、用土を用意する際には、排水性と通気性を意識することが大切です。
地植えの場合と鉢植えで育てる場合では用意する用土が少し異なるため、適したものを選びましょう。
地植えの場合
地植えの場合は、庭土に腐葉土を3〜4割程度混ぜておくのがおすすめです。
水はけがよくない庭土の場合は、赤玉土や軽石を2〜3割程度混ぜると保水性と排水性のバランスが整います。
鉢植えの場合
ホームセンターなどで販売されている草花用の培養土がおすすめです。
保水性と排水性、通気性のバランスが良く、そのまま使えるので栽培初心者も安心して使えるでしょう。
自分で配合する場合には、赤玉土6:腐葉土3:軽石1で配合するとニューサイランに適した用土になります。
ニューサイランを種から育てると大変?
ニューサイランを種から育てるのは、やや難易度が高い傾向にあります。
種から育てるのが大変な理由は、以下の4つです。
- 発芽までに時間がかかる
- 発芽までの温度と湿度の管理が大変
- 成長が遅い
- 期待通りの姿に育たない可能性がある
ニューサイランの種は発芽までに3〜4週間程度と時間がかかり、さらに発芽率も低いです。
また、発芽までは20℃前後の温暖な環境での管理が必要なため、初心者には難易度が高いといえます。
発芽に成功しても、観賞できる大きさに育つには年単位の時間がかかり、親株と異なる葉の色や形になる可能性も否めません。
ニューサイランの栽培を楽しみたい人は、苗や株分けされたものを購入しましょう。
ニューサイランの増やし方

ニューサイランは、株分けや挿し木で増やすことが可能です。
大きくなった株や子株ができているものは株分けをおこなうことをおすすめします。
株分けの時期はいつがいい?
ニューサイランの株分けは、生育期の春か秋におこないましょう。
生育期に株分けすることで、作業後の根の成長や株の回復が期待できます。
株分けのやり方
- 新しい鉢や用土を用意する
- 株を取り出して分ける
- 新しい鉢に植えつける
① 新しい鉢や用土を用意する
まずは、株分けした株を植える鉢や用土を用意しましょう。
鉢植えの場合は、草花用の培養土がおすすめです。
地植えの場合は、植える場所の庭土に腐葉土を3割程度混ぜ込んでおきましょう。
② 株を取り出して分ける
鉢植えの場合は株の根元を持って、株を取り出します。
地植えの場合は、スコップなどで掘り下げて取り出してください。
株の根元を見ると、子株と親株に分けられるので、手で割くようにして分けましょう。
土をほぐしすぎると根を傷つける原因となるため、注意が必要です。
葉が長すぎる場合は、半分程度に切ってください。
③ 新しい鉢に植えつける
スコップで新しい鉢や用土の中心に穴を掘り、分けた株を置きましょう。
株の根元が隠れるように土を被せ、株の周りを軽く手で押さえてください。
最後に水をたっぷり与えたら完了です。
挿し木のやり方
挿し木とは、株の一部を切り取り発根させて増やす方法のことで、ニューサイランは挿し木でも増やせます。
- 株を分ける
- 根と葉を切って整える
- 土に軽く穴を掘って植える
- 水を与える
① 株を分ける
ニューサイランの株の根元をまとまりごとに分けます。
親株と子株でそれぞれまとまりができているため、手で割くようにして株を分けましょう。
手で割くのが難しい場合は、スコップや鎌などで分けることも可能です。
② 根と葉を切って整える
新しい用土で発根できるように、根を切ります。
伸びている根の形を整える意識で切るとよいでしょう。
その後、葉を20cmほど残して切ります。
③ 土に軽く穴を掘って植える
植える場所にスコップなどで穴を掘り、分けた株を植えます。
挿し木の頭が真っ直ぐ上向きになるように植えましょう。
複数の株を植える場合には、株の大きさにもよりますが30〜50cmほどの間隔を空けて並べてください。
④ 水を与える
挿し木が完了したら、たっぷりと水を与えましょう。
鉢植えの場合は、鉢底から水が出るくらいが目安です。
植え替え時期はいつがいい?
ニューサイランの植え替えは、2〜3年に1回程度、生育期の春か秋におこないましょう。
植え替えは植物の成長に欠かせませんが、新しい用土に根を張る必要があるため、株に負担がかかる作業です。
植物の成長が促される生育期におこなうことで、株のスムーズな回復が見込めます。
鉢替えのやり方
ニューサイランの鉢替えの方法は、以下の手順でおこないます。
- 新しい鉢と用土を用意する
- 鉢から株を取り出す
- 株を植えつける
- 水を与える
① 新しい鉢と用土を用意する
ニューサイランは根張りが良いため、元の鉢より一回り〜二回り大きい鉢を用意してください。
また、草丈に対して根が小さい品種のため、安定した鉢に植える必要があります。
用土は、水はけの良い草花用の培養土がおすすめです。
自分で配合する場合には、赤玉土5:腐葉土3:軽石2の割合で混ぜて使うとよいでしょう。
② 鉢から株を取り出す
株の根元を押さえて、鉢から株を取り出します。
根の周りに付いている土を軽く落としておきましょう。
③ 株を植えつける
鉢の中心に軽く穴をあけ、株を置きましょう。
根を隠すようにして周りの土を被せます。
④ 水を与える
植え替えが完了したら、最後にたっぷりと水を与えてください。まだ根が張っていないため、株がぐらつかないように優しく与えましょう。