チランジア テクトラムの育て方
公開日 2025年04月30日
更新日 2025年05月04日
育てやすさ
育て方の難易度は普通レベルです。
監修者情報

覚張大季
植物と人との関わりに魅了され、日本各地の植物農園を見て回る。HanaPrimeの植物部門の立ち上げ後はオフィスや商業施設、個人宅など、幅広いシーンのグリーンコーディネートを数多く担当。植物の生態や特性を深く掘り下げ、それぞれの空間やライフスタイルに適したグリーン空間デザインを提案することが得意。観葉植物の世界に情熱を注ぎ、植物の価値を最大化することを使命としている。

INDEX
目次
チランジア テクトラムの基本情報
植物名 | チランジア テクトラム |
学名 | Tillandsia tectorum |
英名 | Tillandsia tectorum |
原産地 | 熱帯アメリカ |
科名 | パイナップル科 |
属名 | チランドシア属 |
開花時期 | 不定期 |
チランジア テクトラムが自生する場所は、熱帯アメリカの乾燥地帯です。
この環境に適応した結果葉っぱを覆うトリコームが非常に長く発達して、独特のふわふわとしたフォルムになりました。
白く輝く姿から「エアプランツの女王」と呼ばれるほど人気の品種です。
控えめな水やりが推奨されるため成長速度はほかの品種に比べてゆっくりで、開花までには長い時間がかかります。
月別栽培カレンダー
種まき
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植え付け・植え替え
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肥料
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開花
不定期
銀葉種と緑葉種の違い

チランジア テクトラムには、葉っぱを保護するトリコームという毛に似た器官が生えています。
この器官は乾燥地ほど多く、湿潤地は少なくなる傾向です。
密集するトリコームによって葉っぱが銀色に見えるため、この量によって銀葉種、緑葉種と区別されます。
銀葉種と緑葉種には、色のほかに次のような違いがあるので参考にしてください。
特徴 | 銀葉種 | 緑葉種 |
---|---|---|
トリコームの量 | 多い | 少ない |
葉の色 | 銀色 | 緑色 |
自生地 | 乾燥地 | 湿潤地 |
銀葉種の代表的な品種

品種 | トリコームの長さ | 花の色 | 育てやすさ |
---|---|---|---|
テクトラム | 非常に長い | 紫系 | ○ |
イオナンタ | 短い | 紫系 | ◎ |
キセログラフィカ | 長い | 赤系 | ◎ |
ハリシー | 長い | 紫系 | ○ |
テクトラム

非常に毛足の長いトリコームでふわふわとしているのが特徴で、成長は遅いですが、紫色の美しい花を咲かせます。
イオナンタ

肉厚の葉がロゼット状に広がりカールします。
変種が多く開花時に葉がピンクや黄色に染まる品種です。
キセログラフィカ

成長はゆっくりで大きくカールする葉が特徴で、大型に成長し、存在感抜群のためエアプランツの王様と呼ばれます。
ハリシー

赤い花苞に紫色の花を咲かせる美しい花姿が魅力の品種で、入手しやすく、丈夫で育てやすいので初心者にもおすすめ。
チランジア テクトラムはどんな花が咲く?
チランジア テクトラムの花は非常に小さく、大きさはわずか3mmほどです。
ピンクの花序が長く伸び、花苞の中に薄紫色をした小さな花が咲きます。
花びらは先の方が3枚に分かれ、成長と共にカールして開く可愛らしい花です。
チランジア テクトラムは比較的ゆっくり育ち、開花までに長い時間がかかるため花を見られるのは珍しいでしょう。
チランジア テクトラムの葉っぱの特徴

チランジア テクトラムの葉っぱは、水分の吸収や強い紫外線から保護する役割があるトリコームで覆われています。
トリコームは毛足が長くふわふわしていて、白く輝くように見えるのが特徴です。
細い葉っぱが放射状に広がってカールして成長します。
チランジア テクトラムの花言葉
チランジア テクトラムの花言葉は「不屈」です。
チランジア テクトラムの育て方
チランジア テクトラムの水やりや肥料の基本的なことから、枯れてしまう原因についてまで解説します。
水やりの頻度
春夏 | 週2~3回 |
秋冬 | 週1回程度 |
チランジア テクトラムは数多いチランジアの中でも特に乾燥を好むため、水やりの頻度は少なめにします。
生育期(春夏)には週2~3回、休眠期(秋冬)には週1回程度です。
濡れた状態が続くとせっかくのふさふさなトリコームが減少してしまうため、水やり後はなるべく早めに乾かしてください。
長時間水に浸すソーキングは避け、葉水で滴るくらいに水を与えます。
室内で育てる場合は、サーキュレーターなどを使用して風通しを良くしてください。
肥料のあげ方
時期と頻度 | 春と秋、週1回程度 |
与え方 | 液肥と活力剤を1,000~2,000倍に希釈して使用 |
基本的に必要ありませんが、チランジア テクトラムは肥料を好むため、与えると成長に大きな差が出ます。
株を大きく育てたい、いつまでも花芽がつかない、という場合に効果的です。
春と秋に液肥と活力剤を週1回程度、1,000~2,000倍に希釈して与えると良いでしょう。
真夏はストレスになるため肥料を与えるのは避けます。
希釈した液肥を霧吹きで全体にまんべんなく吹きかけてください。
次の水やり時に、葉っぱの表面に残った肥料を洗い流すように水をかけましょう。
病害虫・害虫対策
チランジア テクトラムは病害虫に強い品種ですが、株が増えてくると被害が起こりやすくなります。
よく観察して被害が広がらないようにしましょう。
ハダニ
- 葉に黄色い斑点が出る
- クモの巣のような糸が張る
- 葉っぱの色がくすむ
ハダニの症状がある部分をカットします。
乾燥を好むので葉の裏までしっかり葉水をして、こまめな観察と清潔な状態を保ってください。
カイガラムシ
- 葉に赤褐色や黒い斑点ができる
- チランジア テクトラムの生育が悪くなる
カイガラムシは殺虫剤が効きにくいため、葉ブラシや布で拭いて取り除きます。
水中に浸けて洗い流すのも効果的です。
風通しの良い環境で育てることで、カイガラムシの発生を抑えることができます。
すす病
- 葉や茎が黒いすすのようなカビで覆われる
症状のある葉や茎を濡れた巾で丁寧に拭き取り、風通しの良い清潔な環境にして、よく観察することが大切です。
枯れてしまう原因と対策
以下の2つが、チランジア テクトラムの枯れにつながる原因として考えられます。
- 水分不足
- 風通しの悪さ
水分不足
チランジア テクトラムは、チランジアの中でも特に乾燥に強い品種ですが定期的な水やりは不可欠です。
水切れすることのないようにしっかり水やりをしましょう。
風通しの悪さ
チランジア テクトラムは、標高が高く強い風が吹く場所に自生しているため風通しの良さが大切です。
湿気も嫌うので、サーキュレーターや扇風機を使い短時間で乾くようにしましょう。
チランジア テクトラムの栽培環境
チランジア テクトラムを健康に育てるための、適切な栽培環境を解説します。
置き場所と日当たり

季節 | 日当たり管理 |
---|---|
夏 | 午前中のみ日を当てる、もしくは30%程度の遮光で葉焼けを防ぐ |
冬 | 日差しが弱いので直接日光に当てるか育成用ライトを使用する |
チランジア テクトラムは、山岳地帯の高い場所に自生しています。
そのため風通しの良い乾燥した環境を好むので、栽培は屋外向きです。
日光不足になるとトリコームが減少してしまうので、長い毛足を守るには日差しが十分当たる場所に置きましょう。
日差しが強すぎても葉焼けしてしまうので、直射日光は避けて30%程度の遮光が理想的です。
適切な温度|どれくらいの寒さまで耐えられる?
適切な温度 | 20〜30℃ |
耐寒温度 | 12℃以上 |
チランジア テクトラムの適温は20~30℃、耐寒温度は12℃です。
標高が高く風の強い場所が自生地なので、高温多湿な日本の夏は特に注意が必要になります。
乾燥に強いですが、30℃を超えると葉焼けをする可能性があるので遮光を行いましょう。
冬季は生育が鈍らないように、12℃以上を保つか屋内で管理してください。
置き場所・着生材
チランジア テクトラムは着生植物のため、自生地では樹木や岩に根を張って生きています。
自然環境に近づけると元気に育ちやすくなるので、着生材を用意してあげましょう。
着生させてそのまま置いて飾るのも素敵ですが、ワイヤーなどを使い吊り下げて飾るのもおすすめです。
着生材の種類
- バークチップ
- 流木
- コルク
- ヘゴ板
着生のさせ方
チランジア テクトラムに茶色く枯れた根が生えている場合は取り除き、根元をきれいにしておきます。
紐やワイヤーを株に巻き付けて、根元を軽く着生材に当てるように固定してください。
発根している場合は、小さく切ったマスキングテープを使い根を着生材に貼ると活着が早まります。
チランジア テクトラムを種から育てると大変?
チランジア テクトラムの発芽率は約8割と高く、発芽自体はそれほど難しくありません。
しかし成熟するまでには何年もかかり、大敵であるカビが発生しないように注意して管理するのは大変といえるでしょう。
株分けなら簡単に増やせるので、初心者のうちはそちらがおすすめです。
チランジア テクトラムの開花時期
チランジア テクトラムの開花時期は不定期です。
不定期である理由や、花が咲かない場合の原因について解説します。
開花時期は不定期
チランジア テクトラムが開花するには、株が十分に成熟していなければなりません。
しかし、成熟までの期間は個体差が大きく、特にチランジア テクトラムは成長スピードが遅いため開花時期が不定期となります。
チランジア テクトラムの花が咲かない原因は?
なかなか花が咲かない場合、主に以下のような原因が考えられます。
- 株の成熟不足
- 日光不足
- 環境の変化
- 病害虫の影響
株がまだ若い場合、チランジア テクトラムは肥料を好み成果が出やすいので、液肥と活力剤を与えるのがおすすめです。
また、最初から大きな株を購入すると開花までの期間を短縮することができます。
チランジア テクトラムの増やし方
チランジア テクトラムを増やす方法は株分けが一般的です。
簡単に分けることができるので、ぜひ増やしていきましょう。
株分けのやり方
- 目安は親株の3分の2程度
- 子株を倒して折る
- 外れない場合はハサミで切り離す
① 目安は親株の3分の2程度
株分けをするタイミングは、子株が親株の3分の2程度に生長してからです。
② 子株を倒して折る
親株の根元を持って、子株を離すようにゆっくり倒して折ります。
③ 外れない場合はハサミで切り離す
上手く子株が取れないときは、清潔なハサミで切り離してください。
植え替えは必要?
チランジア テクトラムは土に植えないので植え替えは必要ありません。
ただし、着生材を使用している場合、劣化して傷んでいるようならば交換が必要です。
着生材を交換するやり方
- 新しい着生材の準備
- 古い着生材から取り外す
- 新しい着生材への固定
① 新しい着生材の準備
新しい着生材と、チランジア テクトラムを固定する紐やワイヤーを用意します。
② 古い着生材から取り外す
チランジア テクトラムを固定している紐やワイヤーを外し、根を強く引っ張らないように注意して古い着生材から剥がします。
③ 新しい着生材への固定
新しい着生材への取り付け位置を決めたら、紐やワイヤーでチランジア テクトラムの株を固定します。
根の先端は折れやすいので、強く押し当てず軽く触れるくらいにしてください。
小さく切ったマスキングテープを使い、着生材に根を貼りつけると活着しやすくなります。