アガベ 吉祥天の育て方

アガベ 吉祥天の育て方

アガベ 吉祥天は次のポイントを意識して育てましょう。

水やりの頻度

春～秋	土が完全に乾いてから3日後を目安にたっぷり与える
冬	1ヶ月に1～2回程度、控えめに与える ※葉がしおれる場合は量を増やす

アガベ 吉祥天は乾燥した土壌を好むため、季節を問わずに土が完全に乾いてから水やりをします。

生育期の春～秋には、土が乾いてから3日後を目安に、鉢の下から流れ出すくらいたっぷりと水を与えましょう。

受け皿に水が溜まったままだと根腐れの原因になるため、すぐに捨てるようにします。

休眠期の冬は、1ヶ月に1～2回を目安に土の表面を湿らせる程度に水やりを行いましょう。

ただし、室温によっては水が不足する場合もあるため、葉がしおれるようであれば水の量を増やしてみてください。

季節が変わるタイミングで急に水の量を替えるのではなく、徐々に調整して環境変化のダメージを与えないようにしましょう。

肥料のあげ方

アガベの仲間は本来あまり肥料を必要とせず、栄養分の少ない土地でも元気に育ちます。

用土にはじめから含まれている元肥だけでも問題ありませんが、葉のツヤを出したい、大きく育てたいという場合には肥料を与えるのも良いでしょう。

緩効性肥料か液肥のどちらかを次の範囲で与えてみてください。

緩効性肥料	生育期の4～10月のみ、2ヶ月に1回置く
液肥	生育期の4～10月のみ、規定量を水で薄めて2週間に1回与える

必要以上に肥料を与えると肥料焼け（過剰な肥料によって植物が弱る症状）が発生する可能性があるため、適切な量や頻度で使用するようにしましょう。

病害虫・害虫対策

アガベ 吉祥天は病気や害虫に強い品種ですが、次の2つには注意が必要です。

それぞれの症状と対策を次から確認していきましょう。

アザミウマ

アザミウマは別名「スリップス」と呼ばれ、体長1～2mmほどの小さい害虫です。

初夏～秋にかけて発生しやすく、アガベをはじめ植物全体に被害を及ぼします。

かさぶたのような白い斑点が葉に現れたら、アザミウマを疑いましょう。

殺虫剤での駆除や、市販の専用テープでの捕獲などで対策を行い、被害が大きい葉は清潔なハサミで剪定します。

炭疽病（たんそびょう）

炭疽病（たんそびょう）にかかると葉にグレーや黒の斑点が出現し、徐々に広がって植物全体を枯らせたり腐らせたりするため注意が必要です。

黒カビの一種が原因で発生する病気で、植物全般に広く発生しますが、とくに斑入りの植物で多く見られる傾向があります。

症状を見つけたら該当の葉ごと取り除いて専用薬剤を散布し、風通しの良い場所に置きましょう。

アガベ 吉祥天の基本情報

植物名	アガベ 吉祥天
学名	Agave parryi var. huachucensis
英名	Parry’s Agave、Artichoke Agave
別名	アガベ パリー ホーチエンシス（ハウチュセンシス）
原産地	メキシコ
科名	キジカクシ科（クサスギカズラ科）
属名	リュウゼツラン属
開花時期	数十年に一度

アガベ 吉祥天は、シルバーグリーンで厚みの少ない葉と赤黒～黒色の鋸歯の共演が優美で、その上品な佇まいが人気を集めています。

成長すると70cmほどの高さにまで大きくなり、鉢植えはもちろんのこと、地植えにしても見ごたえのある姿を見せてくれるでしょう。

アガベ 吉祥天は別名「アガベ パリー ホーチエンシス」とも呼ばれ、「アガベ パリー」系の変種の1つです。

名前の似ている「アガベ 吉祥冠（きっしょうかん）」はポタトラムと呼ばれる別の系統ですので、吉祥天と間違えないようにしましょう。

月別栽培カレンダー

種類と品種

アガベ 吉祥天（ホーチエンシス）はアガベ パリー系の品種の1つです。

系譜を辿ると、まず原種のアガベ パリーから「パリーパリー」「ネオメキシカーナ」という2つの亜種が発生し、前者のパリーパリーから更に次の3つの変種が生まれました。

一般的にはホーチエンシスがアガベ 吉祥天に該当しますが、3つの変種を総称して吉祥天と呼ぶ場合もあるため、混乱してしまう方もいるかもしれません。

ここではホーチエンシスの仲間に絞り、代表的な3つの品種について解説していきます。

名前	葉の形状	葉の色	鋸歯
アガベ 吉祥天錦（きっしょうてんにしき）	楕円～しゃもじ型	やや白みがかった深緑色	目立つトップ、その他は中程度～控えめ
アガベ 姫吉祥天	楕円～しゃもじ型	シルバーグリーン	目立つトップ、その他は控えめ
アガベ 王妃吉祥天（メリコ）	楕円、しゃもじ型、細長など	シルバーグリーン～明るい緑色	長く真っ直ぐなトップ、他は控えめ

ホーチエンシスと他2つの変種の違いについては後ほど詳しく紹介しますので、興味のある方はチェックしてみてください。

アガベ 吉祥天錦（きっしょうてんにしき）

「吉祥天錦」の「錦（にしき）」は斑入りタイプであることを表していて、王道の吉祥天の佇まいに中斑（葉の中央に走る斑）が加わった美しい品種です。

吉祥天はシルバーグリーンの葉が特徴的である一方、こちらの吉祥天錦はやや緑色が強く、葉の周囲は深緑色、中斑は明るい緑と優しいコントラストが楽しめるでしょう。

鋸歯は吉祥天の特徴が強く現れ、赤黒く目立つトップスパイン（葉先の鋸歯）と、中程度のサイズの鋸歯が広めの間隔をあけて並びます。

アガベ 姫吉祥天

「姫吉祥天」は吉祥天と非常によく似ていて、子株の段階では玄人でも見分けるのが難しい
品種です。

30cmほどの大株になってくると、鋸歯の色が紫色（赤紫、黒紫）に感じられる個体があり、ようやく吉祥天と見分けられるようになります。

トップスパインは吉祥天と同様に存在感を放ち、その他の鋸歯は吉祥天と同程度かやや控えめです。

アガベ 王妃吉祥天（メリコ）

「王妃吉祥天」は別名「メリコ」とも呼ばれ、子株～中株の段階では葉が垂れるように広がっているのが特徴です。

大株になると葉が立ち上がり、長いトップスパインと相まってキリッとした凛々しい印象になるため、成長段階によって違う表情を楽しめる品種といえるでしょう。

王妃吉祥天には斑入りタイプの「王妃吉祥天錦（メリコ錦）」もあり、白い覆輪斑（葉の周囲に沿って入る斑）が人気を博しています。

アガベ 吉祥天（ホーチエンシス）の葉っぱの特徴

アガベ 吉祥天（ホーチエンシス）の葉っぱの特徴を同じ系統の変種であるコウエシー、トランカータと比較しながら確認していきましょう。

名前	吉祥天 （ホーチエンシス）	コウエシー	トランカータ
色	シルバーグリーン	シルバーグリーン	シルバーグリーン
形状	楕円～しゃもじ型	ダイヤ型 葉先が急に細くなる	しゃもじ型
鋸歯	トップが長い その他は中程度～控えめ 赤～黒色	トップが長く真っ直ぐは長い その他は間隔が広く中程度のサイズ 赤黒～黒色	トップが目立つが中程度 葉の周囲の鋸歯は控えめ 赤黒～黒色

3種とも葉の色はシルバーグリーンで、個体によっては白色が強く出るものもあります。

葉の厚みはいずれも薄めですが葉の形状は大きく異なり、吉祥天が楕円に近い形に対して、コウエシーは葉先に向かって急激に鋭くなり、トランカータは幅の広いしゃもじ型です。

鋸歯はコウエシーがもっとも特徴的で、鋭い葉先からそのまま続くような長く真っ直ぐな鋸歯を持ち、吉祥天はその次に存在感のある鋸歯を見せます。

鋸歯はいずれも赤と黒が混ざったような色をしていますが、吉祥天が一番赤味の強い印象です。

アガベ 吉祥天の花言葉

他のアガベの仲間と同様に、アガベ 吉祥天の花言葉は「繊細」「気高い貴婦人」です。

数十年に一度だけ花を咲かせ、そのあとは子株を残して親株は枯れてしまいます。

繊細さや気高さを感じさせる性質が花言葉の由来になりました。

アガベ 吉祥天の栽培環境

アガベ 吉祥天の栽培環境は次の3点に着目して整備しましょう。

次から順に解説していきます。

置き場所と日当たり

おすすめの置き場所	日当りが良い場所（真夏の直射日光は避ける） 風通しの良い場所
避けたい置き場所	日が全く当たらない場所 湿度が極端に高い場所 エアコンの風が直接当たる場所

アガベの仲間は日差しを好むため、日当たりの良い場所に置きましょう。

ただし、強すぎる直射日光は葉焼けの原因になるので、真夏はレースカーテン越しのようなやわらかい光が当たるように調整が必要です。

十分な日当たりを確保できない場合は、LEDの育成ライトの活用も検討してみてください。

アガベは風通しの良い場所に置くことも大切なため、サーキュレーターなどでお部屋の空気を循環させるようにしましょう。

エアコンの風が直接当たると極度の乾燥によって葉が痛む原因になるので、空調設備からは離して置くと安心です。

適切な温度｜どれくらいの寒さまで耐えられる？

季節	夏	冬
適温	20～30℃	-10℃以上

アガベ 吉祥天は耐暑性があり、生育適温は20～30℃です。

耐寒性も非常に高く、目安として-10℃まで堪えることができ、地域によっては屋外でも越冬できるでしょう。

アガベ 吉祥天の育て方の土の配合比率（用土）

アガベ 吉祥天には水はけの良い用土を使用しましょう。

市販であれば、アガベ専用の土か多肉植物用の土がおすすめです。

自分で配合する場合は、日向土：赤玉土：軽石を4：4：2程度の割合で混ぜるなど、排水性の高さを意識した用土づくりをしてみてください。

アガベ 吉祥天の種まき

アガベ 吉祥天の種まきについて、次の2点を紹介します。

実生（種からの育成）にチャレンジしたい方はぜひ参考にしてみてください。

アガベ 吉祥天の種を入手する方法

アガベ 吉祥天は主に次の方法で入手できます。

入手方法	おすすめ度	価格	少量から買える	種の管理・配送方法	手数料
オンラインショップ	◎	○	△	安心	かからない
フリマアプリ	○	○	◎	懸念がある	かからない
個人輸入	△	○	○	懸念がある	かかる

初めて種を購入する方は、大手のオンラインショップやフリマアプリを活用するのがおすすめです。

種の品質や配送方法に不安がある場合は、そのショップを使用した方の口コミを参考にすると安心でしょう。

とにかく安く入手したい方には個人輸入も選択肢の1つであるものの、「植物検疫証明書」の発行に手数料がかかり、手間と時間も必要になります。

ご自身の目的に合った方法を選んでみてください。

種まきのやり方

ここからはアガベ 吉祥天の種まきの方法について具体的に解説していきます。

種の発芽には20~25℃の気温（室温）が必要です。

目安は3～6月ごろですが、地域によって気温に差があるため、日々の予報を確認しながら種まきの時期を調整しましょう。

用意するもの

① 鉢に用土を入れて水を通す

新品の用土を用意し、鉢の8分目程度まで用土を入れます。

土全体に水を回しかけ、鉢底から出てくる水が透明になるまで続けましょう。

② 受け皿に水を張って鉢を置く

種の発芽には十分な水が必要なため、「腰水」という方法で水を常に土に含ませるようにします。

受け皿の中に水を入れ、その状態で鉢を置きましょう。

水が切れないようにこまめにチェックしながら、1～2日に1回は水を交換して清潔に保つよう心がけます。

③ 土の上に種を乗せてラップで温室状態を作る

土の上に一定間隔で種を置きます。

発芽には日光が必要ですので、土をかけないようにしましょう。

また、発芽に必要な湿度を保つために鉢の上からラップをかけ、簡易的な温室状態を作ります。

④ 発芽を待つ

数日で根が出て、1週間前後で発芽します。

発芽までの日数は個体差があるため、時間がかかったとしても焦らずお世話を続けましょう。

発芽する力がない種はカビが生えてしまうこともあるため、見つけたら取り除きます。

⑤ ラップを外す

発芽した後はラップを外し、外気にさらして生育を進めます。

⑥ 葉が3枚ほど出たら通常の水やりに切り替える

葉が3枚ほど出て株がしっかりしてきたら、腰水をやめて通常の水やりに変更しましょう。

受け皿の水を捨て、土が乾燥してから水をやるようにします。

急に切り替えると環境変化でダメージを受けるため、最初は多めに水を与え、徐々に減らしていくと良いでしょう。

アガベ 吉祥天の増やし方

アガベ 吉祥天は「株分け」という方法で増やすことができます。

株分けは、親株の根元にできた子株を取り外し、別の株として植える手法です。

次から株分けの具体的な情報を確認していきましょう。

株分けの時期はいつがいい？

株分けは生育期がスタートする4～5月ごろに行うのが最適です。

生育期を迎える季節に株分けを行えば、根がしっかりと定着して株の状態を安定させることができます。

株分けのやり方

株分けの基本的なやり方を確認していきましょう。

用意するもの

① 水やりを数日控える

植え替え前の2～3日は水やりを控え、鉢内部の土を乾燥させます。

土が湿っていると鉢から引き抜きにくくなって株を傷つけるため、土を乾かしてすぐに抜ける状態を作っておきましょう。

② 子株を丁寧に外す

鉢をひっくり返すようにして親株と子株を土ごと引き抜きます。

鉢を叩いたり軽く揉んだりすると抜きやすいため、抵抗を感じるときは試してみてください。

抜けたら、根の部分を優しくほぐしながら子株を外していきましょう。

親株にしっかりくっついているようであれば、優しくつまんで左右に振るようにして外します。

枯れた葉や傷んでいる根は清潔なハサミを使って取り除き、余分な土も落としておきましょう。

③ 子株を新しい鉢に植える

鉢の3割ほどの高さまで用土を入れ、子株を植える位置を確認します。

場所が定まったら、用土を隙間なく敷き詰めていきましょう。

植え終わったら、株の根元からたっぷりと水をかけ、鉢底から出る水が透明になるまで続けます。

④ 腰水で水やりをする

鉢を受け皿に置いて水を注ぎ、腰水をします。

水を切らさないように補充しながら、1～2に1回は水をすべて交換して清潔な状態を保ちましょう。

⑤ 半年ほどで通常の水やり方法にする

半年ほど経って葉が数枚出てきたら、腰水をやめて乾燥気味に育てます。

成株と同様に土が乾いてから数日後に水を与えますが、腰水から突然切り替えると環境変化によってダメージを受けるため、徐々に水の量を減らしていくようにしましょう。

植え替え時期はいつがいい？

植え替えは株分けと同様に4～5月ごろに行うのがおすすめです。

根詰まりを防ぐためには1～2年に1回程度の植え替えが必要ですので、必要な道具を事前に準備し、時期を逃さないように実施しましょう。

鉢替えのやり方

次の方法を参考に鉢替えに挑戦してみましょう。

用意するもの

① 水やりを数日控える

植え替え前は2～3日水やりを控えて土を乾燥させ、鉢から引き抜きやすい状態をつくります。

② 鉢から株を引き抜く

株の根元を支え、鉢をひっくり返すようにして優しく引き抜きましょう。

鉢の周囲を数回叩いたり、軽く揉んだりすると隙間ができて抜けやすくなります。

③ 古い土や傷んだ根を取り除く

抜いた株の根に付いている古い土を落としましょう。

軽く揉んでほぐしたり、割りばしなどの細い棒で優しくつついたりして、根を傷つけないようにしながら落としていきます。

茶色くなってスカスカしている根は傷んでいるため、清潔なハサミで剪定して取り除きます。

④ 新しい鉢に植える

新しい鉢に鉢底ネットと鉢底石を敷いて（土が鉢底穴から出なければ不要）、用土を3割ほど入れます。

株を支えながら植える位置を確認し、周囲に用土を敷き詰めましょう。

鉢の周囲を軽く叩いたり、地面でトントンとならすようにしたりして、隙間なく土を入れていきます。

⑤ 2～3日後に水やりをする

植え替え後は、作業中にできた細かな傷から菌が入らないようにするため、2～3日経ってから最初の水やりを行います。

その後は通常どおりの水やりを行いましょう。