スパティフィラムの育て方

スパティフィラムの基本情報

植物名	スパティフィラム
学名	Spathiphyllum
和名	ササウチワ（笹内輪）
英名	Spathiphyllum
別名	ピースリリー、スペイスフラワー、スパティフィルム
原産地	熱帯アメリカ
科名	サトイモ科
属名	スパティフィラム族
開花時期	5～10月

スパティフィラムは熱帯アメリカ原産で、ホームセンターなどでもよくみかけるポピュラーな観葉植物です。

花は、葉の一部が変形してできた、仏炎苞（ぶつえんほう）と呼ばれる白い葉っぱに包まれるような形で咲きます。

全体の大きさや葉っぱの模様の異なる品種が30種ほど存在する多年草です。

また、水を好む性質があるので、乾燥させないよう心がける必要がありますが、コツさえ理解しておけば簡単に株が大きくなります。

花が咲くのは基本的に5〜10月の暖かい季節ですが、寒い時期でも室内管理していれば咲き続けます。

月別栽培カレンダー

種類と品種

品種名	特徴	背丈	育てやすさ	レア度
スパティフィラム メリー	代表的な品種	～40cm	〇	普通
スパティフィラム ミニメリー	メリーの小型品種	～30㎝	◎	普通
スパティフィラム マウナ ロア	色が濃くて大きい葉っぱ	～60cm	〇	やや高い

スパティフィラムには、葉っぱの質感や色合い（斑入り）の違う品種がたくさん存在します。

原産地の熱帯アメリカには、30種類ほどが生息していると言われるほど種類が豊富です。

ここでは、代表的な3つの品種を紹介します。

スパティフィラム メリー

代表的な品種で、花付きが良くスパティフィラムらしい白い花が楽しめます。

スパティフィラム ミニメリー

スパティフィラム メリーの小型品種で、成長しても背丈30cmほどなので部屋にも飾りやすいです。

スパティフィラム マウナ ロア

色の濃い大きな葉っぱが特徴的で、花というよりは南国風な葉っぱ楽しむ品種です。

スパティフィラムはどんな花が咲く？

スパティフィラムは白い葉っぱの部分＝仏炎苞が花だと勘違いされることが多いですが、実際は、その中心にある棒状の部分＝肉穂花序（にくすいかじょ）が花です。

たくさんの小さくて白っぽい花がギュッと詰まった状態で咲いています。

ただ、濃いグリーンに映える白い葉っぱは美しく、実際に仏炎苞を花として楽しむ方も多いです。

花の土台となる仏炎苞は条件が揃わないと出てこないので、スパティフィラムを育てる楽しみのひとつと言えるでしょう。

スパティフィラムの葉っぱの特徴

スパティフィラムの葉っぱは、深い緑色をしていて表面にツヤがあります。

和名でもササウチワ(笹内輪)と呼ばれているように、葉っぱの形は笹の葉に似ていて、株元から四方に伸びるのが特徴です。

葉っぱの大きさは女性の手のひらサイズ程度で、背丈も大きく育つ品種なら60m程度、小さく育つ品種でも30mほどになります。

観葉植物として見栄えする、ボリューミーな見た目です。

スパティフィラムの花言葉

スパティフィラムには「上品な淑女」や「清らかな心」といった花言葉がつけられています。

スパティフィラムの花言葉｜名前の由来

スパティフィラムの育て方

スパティフィラムは水や肥料を好むため、基本的にこまめに世話を焼いてかまいません。

毎日水やりをして、置き肥はほぼ年中与えましょう。

観葉植物にかまいたくて、ついつい水をやりすぎてしまう人に向いています。

水やりの頻度

スパティフィラムは大変水を好むため、かなり頻繁に水を与える必要があります。

寒さを感じない、気温が20℃を下回らない環境であればほぼ毎日水やりして大丈夫です。

一般的に、観葉植物の水やり頻度は“土が乾いたら”と言われますが、スパティフィラムに関しては土が乾く前に水やりをします。

特に水を必要とする夏場は、スパティフィラムが入った鉢の受け皿に常に水が溜まっているような状態でもかまいません。

冬場の水やり

また、冬場の気温が20℃を下回る場合は、頻繁な水やりを控えてください。

土に水分があると冷えてしまい、寒さに弱いスパティフィラムに深刻なダメージを与えてしまうからです。

ところが、スパティフィラムは乾燥を嫌う傾向も強い植物のためまったく水やりをしない訳にもいきません。

以上を踏まえ寒い季節の水やりは、以下のように対応してください。

暖房がきいた部屋に移すなら、葉水をたっぷりやるとよいでしょう。

肥料のあげ方

スパティフィラムは室温が20℃以上になる春先の5月あたりから10月頃までの時期に固形肥料を与えます。

リン酸塩といって花を咲かせる作用のある肥料を、10日に1回の頻度で与えましょう。

スパティフィラムは、肥料が足りないと花を咲かせなくなってしまいます。

病害虫・害虫対策

スパティフィラムには、カイガラムシやハダニが付きやすいので注意してください。

いずれの害虫も最悪の場合、植物を枯らしてしまう可能性もあるため、早期発見と早期駆除が何よりも重要です。

カイガラムシ

カイガラムシは植物に寄生する体長2〜10mm程度の小さな昆虫で、名前の由来通り、翅（はね）の部分が貝殻のような見た目をしています。

防虫剤が効くのは幼虫のみなので、卵や成虫を見つけたらすぐにお箸やピンセットを使い取り除いてください。

取り切れない場合には思い切って茎や葉っぱを剪定するのも一つの手です。

乾燥した植物を好んで発生する虫なので、予防策として毎日の葉水は欠かさないようにしましょう。

ハダニ

ハダニは体長0.3〜0.8mm程度の小さなクモの一種で、葉っぱの上を移動するため、見つけるにはスパティフィラムをよく観察する必要があります。

少しだけ発生した場合はテープで取り除きましょう。

水、もしくは牛乳と木酢液を1:1の比率で混ぜたものを吹きかければまとめて簡単に駆除できますが、牛乳や木酢液は放置すると臭うため、後日水で洗い流してください。

まとめて駆除したい場合、鉢を丸ごと水に浸けるのも有効です。

種まきと植え方

スパティフィラムの種は、育苗ポットに一粒ずつまいていきます。

発芽するまではたっぷり水分を与え、日陰で管理しましょう。

植えつけは地植えではなく鉢植えがおすすめです。

スパティフィラムは温暖な気候を好むため、冬場に気温が10℃を下回るような地域では適宜室内管理に置き換えた方がいいでしょう。

地植えすると移動ができないため、鉢植えが適しています。

水耕栽培もできる

スパティフィラムは水を好む植物のため、水耕栽培も可能です。

やり方は簡単で、根っこについた土を落とし、根腐れ防止剤を入れた水に浸けます。

葉っぱが茂りやすいので、縦に細長い容器は適していません。

幅と高さの比率が1：2くらいの容器だと安定します。

水は根腐れ防止剤を入れたなら1週間に1回、入れてないなら2～3日に1回は変えるようにしましょう。

スパティフィラムの栽培環境

スパティフィラムは、暖かい時期であれば屋外でも管理できます。

置き場所と日当たり

季節	夏場	冬場
温度の目安	20℃以上	20℃未満
具体的な月	5～10月	11～4月
置き場所	室内・屋外ともに可	室内のみ

スパティフィラムのベストな置き場所は、室内の半日陰になる場所です。

日の光は感じられるものの、直射日光が当たらないようなレースカーテン越しの場所がいいとされています。

つまり、室内に窓がある部屋であればどこにでも置けるでしょう。

耐陰性もありますが、ずっと日光に当てていないと花が咲かなくなってしまうため注意してください。

適切な温度｜どれくらいの寒さまで耐えられる？

スパティフィラムは寒さに非常に弱い観葉植物です。

株を弱らせないためにも、20℃を下回るような環境下に置かない方がいいでしょう。

用土

スパティフィラムに適した用土は、排水性と保水性の両方をバランスよく兼ね備えた土がぴったりです。

排水性が保たれる土は赤玉土や鹿沼土で、保水性のある土は腐葉土やピートモス、バーミキュライト、ココチップなどになります。

自作する場合には赤玉土7：ココチップ3の比率で配合してください。

市販の観葉植物の土は保水性に優れるものが多いため、排水性の良い土を別で混ぜるのがおすすめです。

自作する場合の配合比率

市販培養土を使う配合比率

スパティフィラムの開花時期

スパティフィラムの花は、気温が20℃以上あればずっと開花しています。

つまり、冬場であっても暖房のきいた室内に置けば、年中花が楽しめると考えていいでしょう。

また、咲くはずのタイミングに花が咲いていない場合、植え替えのサインが出ている可能性が高いです。

具体的な開花時期と、花がらの処理方法、花が咲かないときの対処法についてみていきましょう。

開花時期は5～10月

スパティフィラムは気温20℃以上の環境下で花を咲かせるため、日本での開花時期は5〜10月です。

初夏から秋にかけてずっと花が咲いているものと考えていいでしょう。

花が咲いた後の処理

スパティフィラムの花が咲いた後は、花がらと呼ばれる花が咲いた後の茎を取り除いてください。

なぜなら、スパティフィラムは順調に育つとたくさんの葉っぱを付けるため、株元が混み合いやすいからです。

茎を取り除く手順は簡単で、以下の2ステップで完了します。

スパティフィラムは茎を折ると、その茎だけが時間の経過とともに乾燥し、茶色くカサカサになったあと自然に落ちていきます。

本数も多くなるためハサミを使って丁寧にやるのではなく、手でポキポキと折っていきましょう。

スパティフィラムの花が咲かない原因は？

スパティフィラムの花が咲かなくなったら、根詰まり・水切れ・肥料不足の3つを疑ってください。

根詰まりや水切れが原因になることが多いですが、生育環境次第では肥料不足の可能性もあるため、チェック方法と対処法についてみていきましょう。

根詰まり

スパティフィラムは成長の特性上、根元からたくさんの茎が伸びます。

観葉植物としてもある程度のボリュームがあった方が見栄えしますが、その状態が行き過ぎてしまうと土の中では根詰まりが進行していると考えてください。

植え替えてしっかりと肥料を与えれば、また花が咲きます。

水切れ

スパティフィラムは、水を好む性質があるため水切れしてしまっても花は咲きません。

花が咲かず、頻繁に葉っぱがしおれかかって慌てて水をやっているようなら、徹底的に水やりの頻度を増やして様子を見てください。

肥料不足

スパティフィラムは基本的に肥料を気温が20℃以上の時に与えます。

しかし、室内など年中暖かい場所で管理しているのであれば、肥料は1年中必要と考えてください。

11～4月頃に、肥料を控えていて花が咲かなくなったなら、生育環境の気温をチェックしましょう。

根詰まりも水切れも疑わしくないときは、肥料不足の可能性が高いです。

スパティフィラムを種から育てると大変？

スパティフィラムは種から育てられる観葉植物です。

しかしながら、世話のしやすさの観点からみても種から育てるのはかなり大変で、実際、種が市場に出回ることはほとんどありません。

種を入手する方法は、スパティフィラムからのこぼれ種の採取です。

スパティフィラムを種まきから育てる場合、保水力の高いピートモスのような土を用意して、育苗ポットに種を一粒ずつまいていきます。

日陰で管理すれば一週間程度で発芽しますが、そこから花が咲くまで大きく育てるには3年はかかるでしょう。

スパティフィラムの増やし方

スパティフィラムは、種からでも育てられる植物ですが、基本的には少ない手間で確実に増やせる株分けで増やすのがおすすめです。

また、株分けをすると親株となるスパティフィラムが根詰まりしすぎないように助ける効果もあります。

剪定・株分けの時期はいつがいい？

スパティフィラムの剪定や株分けに適した時期は、気温が20℃以上ある5〜10月です。

空調がきいた室内で管理しているなら、年中いつでもかまいません。

株分けのやり方

スパティフィラムの株分けは、こまかく分けすぎないのが鉄則です。

一般的な株分けと言えば、親株から出た子株を切り離して行います。

しかし、スパティフィラムは複数の茎が伸びているため、どれが親株でどれが子株かほとんど見分けがつきません。

そして水分を好む観点からも、根っこがなくなって吸水力が落ちてしまう状態も避けた方が無難です。

以上を踏まえると株分けの手順は以下の通りになります。

① 鉢から出して根っこを土ごとカットする

スパティフィラムは親株と子株を切り離すというより、株全体を一つの塊と捉え、それを切り離すように株分けします。

鉢から出した株は、土ごと切り分けましょう。

このとき、一つの鉢に入った株を何株にも分けるのは、スパティフィラムに負担がかかってしまうのでやめてください。

② 根っこをやさしくほぐして土を落とす

植えつけた際に根っこを活着しやすくするために、カットしたスパティフィラムの根っこをほぐします。

不要な根っこが出ている場合は、取り除きましょう。

③ 植えつける

スパティフィラムを植えつける際は、株元が鉢よりも下のラインに来るようにしましょう。

水をやった際に土が流出するのを防ぐ効果と、土が必要以上に乾燥しない効果が期待できます。

植え替え時期はいつがいい？

スパティフィラムを植え替えるなら、元気に育ちやすい春〜秋にかけてやりましょう。

スパティフィラムは基本的に生育旺盛な観葉植物です。

順調に育てば10号鉢がいっぱいになるくらいの大きさに育つため、植え替えは1年に1回か、長くとも2年に1回は必ずやりましょう。

購入したらすぐに根の状態をチェック

買ってきたばかりのスパティフィラムでも、植え替えが必要かどうかをまずは確認してください。

スパティフィラムは、よく根っこが鉢の中でパンパンの状態で売られていることがあります。

この状態を放置していると根詰まりを起こしてしまうため、買ってきたばかりのスパティフィラムは根っこの状態がどうなっているかを必ずチェックしましょう。

鉢替えのやり方

スパティフィラムの鉢替えは、根っこを必要以上に傷つけないように行いましょう。

また、新しい鉢は保水力の高い素材でできた陶器鉢がおすすめです。

ただし、素焼きのテラコッタやスリット鉢は排水性が高すぎるため、スパティフィラムを植えるのには向いていません。

鉢替えのやり方は以下の通りです。

① 鉢から株を取り出す

スパティフィラムを鉢から取り出す際は、根っこを傷つけないよう鉢を逆さまにして株を取り出しましょう。

指で茎を挟むようにして根本に片手を添え、反対の手で鉢を持ってひっくり返して取り出します。

そのままの状態で株を引っ張ってしまうと、ブチブチと根っこが切れる恐れがあるため注意してください。

② 一回り大きな鉢に植え付ける

無事に取り出せた株は、一回り大きな鉢に植えつけましょう。

このとき、根っこはなるべく長く残した状態だと、植え付け後の株もより早く安定します。