キンモクセイの育て方
育てやすさ
育て方の難易度は普通レベルです。
キンモクセイの基本情報
植物名 | キンモクセイ |
学名 | Osmanthus fragrance Lour. var. aurantiacus Makino |
和名 | 金木犀 |
英名 | fragrant olive |
別名 | 木犀花(もくせいか)、オスマンサス |
原産地 | 中国 |
科目 | モクセイ科 |
属名 | モクセイ属 |
開花時期 | 9~10月 |
キンモクセイの鼻をくすぐる甘く芳醇な香りは、秋の訪れを感じさせます。
オレンジ色に輝く小さな花は、匂いを楽しむだけでなく、視覚的にも趣があり、日本の秋の風物詩です。
キンモクセイは、地植えでも鉢植えでも楽しめるのが特徴ですが、それぞれ育てるポイントが異なります。
特に、大きくなると管理が難しい常緑小高木は、剪定が大事です。
毎年、秋が楽しくなるように、元気に育てる知識を身に付けましょう。
月別栽培カレンダー
植え替え
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肥料
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開花
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挿し木・取り木
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種類と品種
モクセイ属は、世界に約20種、そのうち日本には7~8種あると言われています。
ここでは、モクセイ属の代表的な品種を紹介します。
種類と品種 | 花の色や香りの特徴 |
---|---|
ギンモクセイ | 白い花を咲かせ、甘く上品で控えめな香りを放つ |
ウスギモクセイ | 薄黄色の花を咲かせ、ほのかに甘い香りが漂う |
ヒイラギ | 白い花を咲かせ、ほのかに甘い香りがする 花は目立たないが、ギザギザでトゲのような葉が特徴 |
シマモクセイ | 沖縄や南西諸島に自生する 白い花を咲かせ、キンモクセイに似た甘い香り |
リュウキュウモクセイ | 沖縄に自生し、葉が厚く、小さな白い花を咲かせる キンモクセイに似た甘い香り |
キンモクセイの原種は、モクセイ属の基準種とされるギンモクセイです。
また、もともと「ウスギモクセイ」のことをキンモクセイと呼んでいました。
三嶋大社(静岡県三島市)にあり、1934年に国の天然記念物となった「金木犀」が、このウスギモクセイと呼ばれるものです。
いま私たちが見ている赤みを帯びたオレンジのキンモクセイは、ウスギモクセイの中から突然変異の色が濃いものを挿し木で増やしていった説と、中国の丹桂を輸入した説があります。
キンモクセイはどんな花が咲く?
キンモクセイの花は、オレンジ色で花冠が4つに分かれており、非常に小さくて厚みがあります。
また、甘く芳醇な香りを放つことも大きな特徴です。
色はオレンジと言っても、少し赤みがかった人参のようなイメージです。
甘い匂いは非常に強く、昔トイレの横に植樹して消臭剤の代わりにされるほどでした。
今でも、消臭剤の匂いの種類にキンモクセイの香りのものが売っているのは、そのなごりです。
また、小さく可愛らしいサイズなので、ブローチなどのアクセサリーのモデルにされることも多く、昔から日本人には馴染み深い花となっています。
キンモクセイの葉っぱの特徴
キンモクセイの葉っぱは、細長い楕円形で先は尖っています。
大きさは6~12cmくらいで、緑色です。
平坦なものは少なく、少し裏側に沿って緩やかに曲がっています。
また、葉は固く丈夫ですが、厚みはありません。
キンモクセイの花言葉
キンモクセイは、「謙虚」「謙遜」「気高い人」「真実」「陶酔」「初恋」と、多くの花言葉を持っています。
「幽世(カクリヨ)」と呼ばれる、怖い意味を持った花言葉もあります。
キンモクセイの育て方
キンモクセイは、地植えと鉢植えで育て方が大きく変わります。
それぞれの育て方の違いを、しっかりと確認して元気に育てましょう。
苗の選び方
キンモクセイの苗選びには3つのポイントがあります。
- 根
- 幹
- 葉っぱ
養分や酸素、水を送る役割を持つ、細く白い根が多いかどうか確認しましょう。
また、みずみずしく潤いがあるか、枝の間隔が一定かどうかを確認します。
幹がまっすぐ伸びているものは、成長してから手入れもしやすくなるので、おすすめです。
虫に食われた葉はほかの葉の成長の妨げになるので、大きく濃い緑で、虫食いが少ないかも大切になります。
キンモクセイは、庭に植える常緑小高木として長い付き合いになるので、少しでも状態の良いキンモクセイを選びましょう。
水やりの頻度
キンモクセイの水やりの頻度は、地植えと鉢植えで少し異なります。
地植えの場合は、植え付けてからの半年間はまだ根も大きくなく、地面の水分を自力で吸い上げる力がないため、土が乾いたら水をやります。
それ以降は、地面の水分を自身の吸水力だけで補えるので、水をやる必要はありません。
鉢植えの場合は、土の表面が乾燥したら、鉢底から水が出るくらいたっぷりと水をやりましょう。
冬は水の吸収力が落ち、土も乾きにくくなるので、頻度は控えめになります。
キンモクセイは多湿が苦手なので、水のやりすぎには注意しましょう。
肥料のあげ方
肥料に関しても、地植えと鉢植えであげ方は異なります。
地植えの場合、2月に有機質の肥料を与えましょう。
2月はまだ気温も低く成長はしませんが、このころに肥料を与えておくと、ちょうど春に吸収しやすい形に変化します。
成長が遅いようなら、8月上旬に追肥をすることも可能です。
その場合には液体肥料をおすすめします。
鉢植えの場合は、2月、5月、9月の3回に分けて与えます。
2月はゆっくりと効果を効かせるために有機質肥料、5月は夏に向けて体力をつける追肥目的で化成肥料、9月はキレイな花を咲かせるための花肥えとして化成肥料を与えましょう。
病害虫・害虫対策
キンモクセイには、ハダニやカイガラムシといった害虫が付くことがあります。
ハダニ
ハダニは、乾燥した葉の裏に付きやすい害虫です。
ハダニが発生すると、葉の色が黄ばみ枯れてしまいます。
枯れた葉は、回復することはないので切り落としてください。
ハダニは乾燥を好むことから、葉水を徹底していれば発生対策になります。
カイガラムシ
カイガラムシは、風通しと日当たりの悪い幹や枝に発生しやすい害虫です。
見つけたら柔らかい歯ブラシなどで、こそぎ落としましょう。
オルトランのような害虫駆除スプレーや、粒状のばらまくタイプの害虫駆除剤を使うのも一つの手段です。
種まきと植え方
キンモクセイは雌雄異株です。
雄花の雄株、雌花の雌株が別々に存在し、日本にあるキンモクセイは中国から輸入された香りが強い雄株だけで、挿し木によって増えています。
そのため実が生ることはなく、種はありません。
育てようと思ったら、苗や挿し木を買うことになります。
キンモクセイの栽培環境
キンモクセイを鉢植えで栽培する場合は、一般的な植物と同様にそこまで神経質になる必要はありません。
ただし、地植えで育てる場合は、植え付ける場所や冬の越し方に注意が必要です。
置き場所と日当たり
キンモクセイは日当たりがよく、半日陰くらいの場所を好みます。
地植えの場合、車の排気ガスなどが多い場所に植えると花付きが悪くなります。
また、キンモクセイの花は小さく量が多いので、開花シーズンが終わると花の掃除が大変です。
地面がオレンジの絨毯のようになっても大丈夫な場所に植える必要があります。
屋内で鉢植えを育てる場合には、レース越しの明るい日差しが差し込む窓際がおすすめです。
適切な温度|どれくらいの寒さまで耐えられる?
キンモクセイは寒さには多少弱いため、冬の冷たい風が当たりにくい場所に地植えしましょう。
マイナス6〜8℃くらいで枯れると言われています。
そこまで気温が下がらない地域でも、霜や凍結には注意が必要です。
場合によっては寒冷紗で全体を覆って、防寒対策をしましょう。
鉢植えの場合は、屋内の暖かい場所へ移動させてください。
その際には、エアコンの暖房が直接当たらないように気を付けましょう。
用土
キンモクセイは、水はけが良く栄養のある土を好みます。
地植えの場合は、植えこむ土を耕して、そこに腐葉土と堆肥を混ぜ込むのがおすすめです。
鉢植えの場合は、赤玉土(小)と腐葉土を7:3くらいで混ぜた土が適切でしょう。
土の配合が難しい場合は、市販の園芸用培養土を使っても問題ありません。
キンモクセイを種から育てると大変?
キンモクセイは雌雄異株です。
雌雄異株とは、雄花を持つ雄株と雌花を持つ雌株が別々に存在する品種のことを指します。
また、日本のキンモクセイは中国から輸入された香りの強い雄株だけが輸入され、挿し木や取り木で増えています。
そのため、実が生ることはなく種がありません。
キンモクセイを一から育てる場合、挿し木や取り木の苗を買うことになります。
キンモクセイの開花時期
キンモクセイの花は、秋の風物詩です。
鮮やかなオレンジ色の花と甘く芳醇な香りは、気持ちが穏やかになります。
ここでは開花時期と花が咲かない原因について解説します。
開花時期は9月下旬~10月中旬
キンモクセイの開花時期は、9月下旬~10月中旬です。
キンモクセイの花が咲くと、一気に甘い香りが立ち込めて秋らしい雰囲気になります。
また、地面に落ちたキンモクセイのオレンジ色の花の絨毯は、冬の訪れを感じさせます。
キンモクセイの花が咲かない原因は?
キンモクセイの花が咲かない理由には、主に以下の5つの原因が考えられます。
- 極端な日照不足
- 極度の水切れ
- 未成熟か植え付け後
- 太い枝を剪定しすぎた
- 夏以降に花芽を切った
それぞれ、詳しく見て行きましょう。
極端な日照不足
通常、屋外で育てていれば、多少の日照不足でも花は咲きます。
ただし、極端な日照不足になると、光合成ができなくなり咲きません。
極度の水切れ
人の背丈を超えるくらいの大きさになれば、水切れを起こすことはありません。
まだ若い苗や鉢植えで育てている場合は水切れを起こしやすいので注意が必要です。
未成熟か植え付け後
鉢植えの場合、植え替えをせず同じ鉢のまま育てていると根詰まりを起こします。
すると、キンモクセイの成長が止まり未成熟になり、花芽を出さなくなるので注意が必要です。
また、鉢から地面に植え替えると、木としてキンモクセイが若返りを起こします。
若返ったキンモクセイは、枝を伸ばすことばかりに注力し、花を咲かせなくなります。
こうなると、もう一回り大きくならないと花が咲きません。
これには長い年月を要するので、地面への植え替えはよく考えて行いましょう。
太い枝を剪定しすぎた
太い枝を剪定しすぎると、そこから新しく出てくる枝は、徒長したり枝が太くなったりします。
そのような枝には花が咲かなくなります。
夏以降に花芽を切った
キンモクセイは、夏になると秋に向けて花芽を出します。
この花芽が付いた枝を剪定してしまうと、花が咲かなくなります。
キンモクセイの剪定
キンモクセイは、育てていくと大きな木になります。
自分の背丈を越すほどの大きさにもなれば、管理も大変です。
そのため、剪定を適宜行うことで、あまり大きくせずにほどほどの大きさを維持して楽しむことができます。
剪定の時期はいつがいい?
春から秋にかけての暖かい時期が適切です。
キンモクセイは少し寒さが苦手なので、冬の剪定はやめておきましょう。
また夏になると花芽を付けるようになるので、間違って花芽を剪定しないことも重要になります。
剪定に必要な道具
キンモクセイの剪定には、以下の道具が必要です。
道具 | 用途 |
---|---|
剪定ハサミ | 細い枝を切る |
剪定ノコギリ | はさみで切れないような太い枝を切る |
軍手 | 尖った枝や切り口の樹液から手を守る |
脚立 | 大きく育ったキンモクセイに必要 |
癒合剤 | 切り口の防腐対策 |
剪定のやり方
キンモクセイの剪定は、小さく管理のしやすい大きさを維持するために行います。
そのため、どのような枝を切るのかを見極めるのが最も重要です。
まずは、小枝があまり出ていない高く伸びた枝から剪定します。
小枝がたくさん出てきている枝には、その小枝がもっとも高い位置になるように、小枝が出ているところの高さまで剪定します。
上に伸ばさず、横から伸びた小枝を残していくイメージで、全体のバランスも考えながら剪定しましょう。
また大きな切り口には、癒合剤を塗布しましょう。
癒合剤には、防腐対策として木を保護する役割があります。
キンモクセイの増やし方
キンモクセイは、雌雄異株と言って、雄花を持った雄株と雌花を持った雌株が別々に存在します。
そのため日本にあるキンモクセイは、中国から輸入された香りが強い雄株だけで、実が生ることはなく種もありません。
一般的には挿し木や取り木で増やすことが可能です。
挿し木・取り木はいつがいい?
挿し木や取り木は、生育期である4~7月がいいでしょう。
キンモクセイの挿し木は、発根率が低く難しいです。
成功したとしても、花が咲くまでは5~7年と長い年月を必要とします。
キンモクセイは取り木で増やすことをおすすめします。
取り木のやり方
取り木のやり方は以下の通りです。
- 枝の外皮をカッターで剥く
- 水苔を巻き付け、紐で縛る
- 根が発根する
- 発根した根を切り落とし、植える
① 枝の外皮をカッターで剥く
枝の外皮を2~3cm幅でぐるりと剥きます。
② 水苔を巻き付け、紐で縛る
湿らせた水苔を巻き付け、ラップやビニールで覆って紐で縛ります。
③ 根が発根する
光合成のため葉を3枚残し、発根した部分から下を切り落とします。
④ 発根した根を切り落とし、植える
最近では、取り木ボールという水苔を覆う装置があるので、そちらを利用してもいいでしょう。
植え替え時期はいつがいい?
キンモクセイの植え替えは、成長期が始まる3~4月が適切です。
2~3年に1回くらいのペースで行って、根詰まりを防止しましょう。
鉢替えのやり方
鉢替えの手順は以下の通りです。
- 鉢から株を取り出す
- 根についた土をもみほぐして落とす
- 傷んでいる根があれば剪定する
- 一回り大きな鉢を用意する
- 鉢底に鉢底石か鉢底ネットを置く
- 土を半分だけ入れる
- その上に株を置く
- 残りの土を入れて高さを整える
- たっぷりと水をやる
① 鉢から株を取り出す
② 根についた土をもみほぐして落とす
③ 傷んでいる根を剪定する
④ 一回り大きな鉢を用意する
⑤ 鉢底に鉢底石を入れ、土を入れる
鉢底石または鉢底ネットを置き、土を半分まで入れます。
⑥ 鉢に株を植え、たっぷり水やりする
鉢に株を置き、残りの土を入れて高さを整えたら、たっぷり水やりをしてください。